イスターレ王国魔術師団長メルヒオール・フーゲンベルク

「じゃあ、セックスしましょう! 」

「へ? 」

王城に隣接されている魔術師団の施設。その自身の執務室の応接ソファーで、イスターレ王国魔術師団長メルヒオール・フーゲンベルクは人の良さそうな笑顔のまま固まった。
額からは次から次へと汗が流れている。
向かいに座る――突如として現れた、自分の理想を絵に描いたような女性を前にして。

(いや……今した俺の説明を彼女に理解していただけたのなら自然な流れなんだけど……ほ、本当にこの娘が俺と……? )

目の前の女性『近藤里美』の実年齢は「この娘 」と言うものでもないし、魔術師団長メルヒオールとも一つ二つくらいしか歳も違わないのだが――背中に流した黒い髪は艶やかで、エキゾチックな顔立ちはミステリアスだけれど、メルヒオールにむける眼差しは優しげだった。
その分、先ほどの発言はギャップが凄すぎるのだが。

(本当にこの娘が……俺の『落ち人さま 』……? )

『落ち人さま 』とは、この世界アントワールにとって祝福の受け皿とも言われる異世界からの来訪者である。

女神セレスの強い祝福を一身に受ける『落ち人』は、その存在だけで国を富ませると言われてきた。

『落ち人』の居る街は、災害知らず。

『落ち人』の居る領地は、飢餓知らず。

『落ち人』の居る国は――

 土は肥え、太陽に愛され、恵の雨は優しく、精霊の祝福を得る。

(未婚のまま魔術師団長になったら、落ち人さまが遣わされるだろうって噂は本当だったんだ…… )

メルヒオールは絵に描いたような草食男子であるものの、地味に美人な顔立ちをしている。地味過ぎて気付かれにくいのがたまに傷だし、漆黒と称される程の暗い色をした髪の毛、と言うのも彼の地味さに拍車をかけている。
気の弱さが眼差しにも現れているのか、眠たげというわけでも無いのにいつでも半開きの瞳は美人オーラをも半減させた勿体無い仕様であった。

まあ、彼の『落ち人さま 』はメルヒオールの美しさや押しに弱そうな雰囲気にも萌えに萌えているようで、先ほどから目をギラギラさせているのだが。

メルヒオールは控えめに、チラリと『落ち人さま 』を盗み見た。

(黒く見えたけど目は焦げ茶色なんだ……俺は髪も目も真っ黒だからな…… )

「あの、質問なんですけど…… 」

「ッ ?!な、なに?! 」

ドキーンッ! と跳ねて痛む胸元のローブをぐっと握りしめてメルヒオールは返した。
魔法研究一筋で生きてきた彼にとって、理想の女性に話しかけられた経験など今までに無い。
心臓が早鐘を打つし、変な汗も出てきてメルヒオールは若干涙目だった。

「先ほどのお話ですと……『落ち人 』は魔力の定着作業をしないと窒息して死んでしまうんですよね? 」

メルヒオールはハッとした。突然知らない世界に来た上、何もしないと死んでしまうなんて彼女は不安に違いないのにと。まともに会話もままならない自分を恥じた。

「う、うん……そうなんだ。えっと……怖いよね……だ……大丈夫だよ、俺がなんとかするから―― 」

「なんとかってセックスですよね? 」

「うぐっ! 」

「………… 」

里美の容赦ない言葉にメルヒオールは言葉をつまらせて顔を真っ赤にした。変な汗もかいてきた。
里美はメルヒオールのそんな反応を見て少し考えるそぶりをすると、おもむろに切り出した。

「もしかして……メルヒオールさんは、あの……はじめて、ですか……? 」

「うわあ?! 」
――ガチャンッ

落ち着こうとお茶を一口含もうとしたところで言われ、メルヒオールは動揺のあまりティーカップをソーサーに落とした。
双方割れはしなかったものの、メルヒオールのローブはお茶でびっちょりと濡れてしまい、ごく自然になにがしか唱えた彼の魔法はオドオドと頼りない彼の雰囲気に反して効果は劇的――一瞬でローブは綺麗に乾いた。

里美がその事に感心したのも一瞬の事、メルヒオールの警戒を避けるように音もなくテーブルを回り込んで彼の隣に座ると、ちょんっとローブの裾をひいた。

(えっ? え、え?! な、なに?! か、かわいい! ちょんって! ちょんってそれたの?! ローブちょんってされたの今?! いや、っていうか近っ?! い、イイ匂いがする?! )

「え、あの?! え……え?! ――アッ?! 」

――カリ……カリ……

里美はメルヒオールのローブの中、黒い魔術師団服の布越しに彼の乳首を的確に爪で掻いた。

「アッあの?! さ、里……里美さ……?! 」

――カリ……カリ、カリ……

「もう私、少し息苦しくて……もっと辛くなる前に――ね? 」

「はっ……あん?! あのっそ、それなら……キ、キス! キスを―― 」

(とりあえずキスをすれば魔力回路は構築されるから一週間は窒息の心配が無くなる筈――ってあれ?! さっき、里美さんが現れたその時に俺、キスしたよね?! )

メルヒオールが若干パニックを起こしたタイミングで、里美はクンッと彼の胸倉を引いた。
触れるか触れないかの位置に唇を寄せると、メルヒオールの唇を見つめてからゆっくりと視線を動かし、彼の瞳を上目遣いで見つめた。

「キス? したいの……? ね、私と――キスしたい? 」

「ッ ?!!?!! 」

(え、何。えー?! 息、息がかかってる! 唇に!フッてした! いま、フッてしたー?! って言うか、かわっ可愛いー!! 近くで見ても奇跡かってくらいかわいいー!! )

メルヒオールからしてみたら、したいかどうかと聞かれたらそれはしたいに決まってる。
何度も言うが、彼の理想を絵に描いたような女性なのだ。
背はメルヒオールより少し低め、ぷくりとした下唇、その瞳は眼差し一つで美しくも妖しくも光ってメルヒオールを惑わせる。
エロい、とてつもなくエロい。
メルヒオールは可愛い系よりもセクシー系が実は好みだ。誰にも言ったことは無いが。
しかし目の前のエロ可愛い生き物を見た時、自分の理想はコレだと直感的に理解した。
メルヒオールは魔術師団長の地位に付くこの時まで独身、恋愛沙汰にも男女の機敏にも疎い。自他共に認める草食系男子である。
先ほどから何か積極的な里美の雰囲気も、消極的で優柔不断なメルヒオールからしてみたら情けない気持ちにはなるけれど、ありがたくもあり――

「ッァア?! 」

「……硬くて、熱い……コレ、なぁに? 」

「ふっ……ぅ、え……? アッ?!も、揉まな……いで、アッ…… 」

(うああああっ?!き、きもちいい――ッ ! )

いつの間にかメルヒオールの膝を跨いで座って居る里美に、アレを優しく揉み解されていた。
美いが弱々しく開いた瞳に涙を浮かべてよがる姿に、里美の喉が鳴った。

「ね、コッチ見て? 」

「え……んっ?! 」

快楽に夢中で目をキツく閉じて俯いていたメルヒオールは、里美に言われて上を向いたと同時――唇を塞がれた。
先ほどは味わう余裕もなく、己の魔力を細く薄くゆっくりと送り込む事に集中していた口付けは、想像も及ばないほど甘く――そして熱かった。

(く、唇……やわらかい! いや、里美……さんはどこもかしこも柔らか―― )

――うにゅるっ

「?!!?!?!! 」

里美の舌がメルヒオールの口内に侵入した。
ぷくりとした唇にピタリと口付けられながら、ちゅるりちゅるりと舌を絡めとっては控えめに吸い上げられるので、その度メルヒオールは中心へ鋭い痺れが走るのを感じた。

「んっんっんっ……ッんあっ?! んん――!! 」

どんどん身体に力が入らなくなっていく。
メルヒオールはソファの背もたれに寄り掛かった格好のまま、ずるずると横に崩れていってしまう。

――クチュリ

最後に少し強く吸い上げたと思ったら、里美の唇が名残惜しげに離れていって、メルヒオールは無意識にその唇を目で追った。

(――ま…… )

「――待って! 」

気付けば、離れようとした里美の頭を身体ごと引き寄せて、ギュっと抱きしめ――そのまま自室へと転移魔法を使っていた。

――――――――――――――
【異世界行ったら魔術師団長サマと即エッチ!】
でした、お次は王都の合法ショ……大賢者様です!

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