異世界行ったらインキュバスさんと即えっち!26

 晩餐はそのままラウロの部屋で行われた。

 メンバーは会議に居た面々である。

 相変わらずハロウィン期間中にホテルで行われるイベントバイキングのような料理が中心だったが、ちゃんと『チーズの色をしたチーズフォンデュ 』や、衣は紫色だけれど『身がちゃんと白い』白身魚のフライなどあって優香は久しぶりに視覚と味覚の一致を楽しんだ。

 なぜか茜猫がドヤ顔をしていた。

 食後のお茶も終わり、さて退席となった時に優香はヒューバートから何の礼かわからない礼を言われた。

 その時、全くヒューバートと目が合わなかったのが印象的であった。

「……ちょろ過ぎるんだけど、やめてくれる? 」

「だ?! だからコレは違う! 」

 何故か一瞬でとてつもなく不機嫌になったラウロと、ひどく慌てた様子のヒューバートに優香は首を捻った。

 皆を見送って賑やかな食事の時間が終わり、二人きりになると優香はラウロからふわりと甘い気配を感じ取った。

「っ…… 」

 なぜそんなものを感じられるのか自分で自分がわからず

「──優香おいで 」

 皆が退室して、ラウロが優しく優香の手を引く。

「うあっ?! ──な、なななななっ?! 」

「落ち人の世界ではこうやってお姫様をベッドに連れて行くんだよね? 」

 お姫様抱っこである。

 ラウロは魔人の姿の時と比べて、身体も小さくなっているし筋肉もあの時ほどでは無い。

 しかし、どういった原理なのか力の強さはそう変わらないようであった。

 邪魔そうな前髪の奥でニッコリ微笑んだラウロが、軽々と優香を抱いて寝室へと向かう。

 寝室の場所はというと、会議室より手前に狭い階段が設置されており、半二階のような位置にその扉がある。

 魔人は警戒心が強く、このように入り組んだ場所で無ければ眠れない者も多くいるらしい。

 部屋の主人以外は階段の位置すらわからないよう、認識阻害の魔法を魔王の魔力によって掛けられていて、魔王の庇護下にある者ならばこれ以上無いくらいの強固なセキュリティだ。

 扉の脇に設置されたドラゴンの置物、大きく開かれた口の中へラウロが掌を置くと、小さいものの重厚な扉が開かれた。

 ぶっちゃけ合意の無い女性を無理やり連れ込んだらと考えると怖い寝室なのだが、そこはそれ、魔王城にいる限りは職務中と言うこともあるし、部屋に登録されている魔人以外は弾かれてしまう仕組みなのだ。

 優香という落ち人は、薄くラウロの魔力を纏っている。セキュリティは優香をラウロの落ち人と判断して寝室へと迎え入れた。

 他の部屋と変わらず、黒を基調とした部屋だった。

 部屋自体は王城にしては狭く、中央に置かれたキングサイズ程のゴシック天蓋付きベッドの周りに、人一人余裕で歩ける程度のスペースが空いているくらいだった。

 ベッドの脇に備え付けられた台に足を掛け、優香を抱いたままベッドへ上がり、ラウロはベッドヘッドへ腰掛けた。

 優香は終始真っ赤になって口をパクパクとさせている。

(び、ビックリしすぎて『うあ』って言っちゃいました……も、もう少し可愛い悲鳴をあげたかったです…… )

 結構どうでも良いことを考えて落ち込んでいた。

「ねぇ優香…… 」

「うぴゃあっ?! 」

 今度は間抜けな声が出た。中途半端に作ろうとするとこうなる。大いなる反省点だった。

 優香を横抱きのまま腰掛けて離そうとしない上に、耳元で囁いたりするラウロのせいと言えばせいであるが。

 優香の間抜けな悲鳴にもクスクス笑いで嬉しそうにしている地味イケメンに、優香は恨みがましい視線をおくる。

 そんな視線も揶揄うような「どうしたの? 」と言った表情で受け止めるラウロは、髪の毛ボサボサの癖に行動がイケメン過ぎるので優香はますます渋い顔になった。

「俺のツガイはご機嫌ななめかな? 」

「うっ…… 」

 甘く優しい笑顔。

 前髪の間から覗くそれに、イケメンにしか許されない台詞を言われた。逆にこれが見るからなイケメンだと寒く感じるのに、目の前の地味イケメンが口にするのは優香の中では許されてしまう。

 惚れたよわみなのか、やはり優香のストライクはラウロである。彼の一挙手一投足、全て好き過ぎて仕方が無かった。どうしたってキュンッとしてしまうし、このように優香の苦手なモテ男要素――自分がイケメンである事を理解していて、ある程度の行動が許されるとわかっている――もあると言うのに、何も責める事ができない。

 するりと、優香の背中を支えていた手がうなじを掌で覆い、もう片方の手で眼鏡を奪われてそちらに意識がいったその時――彼は優香の頰を悪戯な指先でツンと押すと、ラウロの方へ向かせた。

 途端、優香の唇に柔らかなものが触れる。

「ん……ぅん……ふ…… 」

 ラウロのキスは優しく、優香の身体を蕩けさせる。

 その間も、ラウロのもう片方の掌が優香の脚を、まるであやすように撫でていった。

 身体の芯がふにゃふにゃになっていくと、自然首を支えてくれているラウロの掌に頰を預けてしまう優香。

「可愛い……かわいいよ、優香 」

 ジクッ……と、優香の中心に快感の槍が刺さる。

「好きだよ優香……愛してる、可愛い優香をたくさん見せて 」

 囁きながらキスを繰り返されて、中心からジワリジワリと広がる湿った熱。

 ──くちゅ……

「ひうっ?! 」

 腿を滑るラウロの指先が、ソコヘとたどり着いてしまった。

「さっき見えたんだ、優香の新しい欲の糸が……ふふっ 」

 ──くちゅり……くちゅ……コリッ

「あっあっあっ……ふあっ 」

 優香の弱いところを指の腹で優しく撫で撫でされて、固くなったその粒を捕らえられた。

「俺に……『普通に抱かれてみたい』の? 」

 ──そんなに可愛い事を思ってたなんて、それを知った時の俺の気持ちがわかる?