異世界行ったらインキュバスさんと即えっち!7

「うわぁ……はろうぃーん……」

 優香は今、魔王都を一望できる小高い丘の塔にいた。

 なんでも『落ち人』である優香は一度魔王様に会っておいた方が何かと都合が良いらしいのだが、ラウロには「優香が嫌だったら魔人領を出てもいいんだよ? 」とニッコリ爽やかにのたまった。

 いや、ダメだろう。絶対アカンやつだろう。

 優香は慌てて「大丈夫ですからっ」とラウロをたしなめた。

 少し想像すればわかることだ。優香が目を覚ましたベッドがあった部屋もさることながら、その館は随分と大きな建物であったし、使用人や部下らしい人たちもいた。

 軟禁されていたわけでは無いが、ごはんは運ばれてくるし、トイレもあるし、お風呂は無いけれどラウロが優香にかけてくれる洗浄魔法はお風呂上がりのようにサッパリと気持ちのよくなるものだったので、我儘を言ってまで所望するものでもないと優香は思った。

 以上の事から館の中を探検するような事はなかった。

 今日になって『転移魔法陣』とやらを使う為に館を出る際に出口までの道のりだけ歩いたくらいだったが、使用人も部下らしき人もみんなラウロに頭を下げていたのであの館の主人はラウロと見て間違いないだろう。

 以上の事からラウロは魔人領でしっかりとその足を根付かせている。彼の今までの生活を捨てさせてまで、『落ち人』の義務らしい『魔王様に会う』というミッションを拒否する理由なんて優香には無かった。

「はろうぃん? 」

 長身の地味イケメンがきょとんとしながら首を傾げている。優香はそれだけで悶絶しそうな程に萌えていた。

 ……ラウロ優先、ラウロ好き、ラウロ可愛い。

 これで実は全てが演技で、ラウロが悪いやつだったとしても自分が馬鹿だっただけだ。

「な、なんでもないです……なんて言うか、ずっと思ってましたけど……太陽がサッパリ見えませんよね?そしてその気配も無い。この国は晴れる事が無いんですか? 」

 イギリスの天気の悪さを誇張表現した映画がたまにあるけれど、アレより暗いだろうなと思いながらなんの気無しに聞いた優香だったが、ラウロはボサボサの前髪の隙間から覗く瞳を曇らせた。

「落ち人の中には、この気候のせいで気鬱になるという人間もいるらしいんだよね……優香は、平気? 」

「えっ……えっと……? 」

 ま、まさかずっと『こう』なのだろうか……?と、優香は思った。

 人間、太陽の光は健康に欠かせないと聞いたことがある優香は一瞬ひよった。

「う、うーん?でも、女神様が此処で生きていくのに多少身体を変える……とか言ってた気がしますし……大丈夫なんじゃないでしょうか……?」

 たまには太陽の光も恋しくなるだろうけど……という言葉は飲み込んだ。

「でも、こう日照不足で食料とかは平気なんですか……? 野菜とか……? 」

 昨日ラウロの部屋に運ばれて来た食べ物の中には野菜や果物もあった。しかし形そのものに見覚えはあれど、見たこともない暗い色のものばかりだった。

 紫キャベツはわかるとして、ダークグリーンのトマトや、灰色のきゅうり、紺色のピーマン、中まで血のように紅いりんご、辛子色の人参など……染色に使用するにはよさそうだが、普通であれば食欲が減退するような色ばかりが並んでいた。

「人族領にある食物は陽の光が欠かせないんだってね?魔王様が言ってたよ。魔王領の植物は陽の光を必要とするなんて聞いた事ないから、最初にその聞いた時は信じられなかったなぁ……逆に魔人領の植物は人族領では育たないらしくて、最近では輸出で結構稼げるようになったって聞いてる 」

 ……一体何で育ってんだ、魔人領野菜。

 優香は少し遠い目をした。

「そんな事より優香、その話し方だけど…… 」

「っえ?!な、ナンデスカ?! 」

 優香は昨日の情事の時、すっかり敬語を使うような余裕は無くなっていて、甘えるような声音で随分恥ずかしい事を言ってしまった事をとても後悔していた。

 女神様に保障された『ツガイ』とは言え、優香は年上でしかも初対面であろう大人の男に気安く話しかけるようなタイプではないのだ。

(は、恥ずかい。ツッコまないで、触れないで、お願いだからスルーして)

「…………うん、まいっか 」

 真っ赤になってぷるぷるしている優香が可愛いから今はこれ以上触れないでおこうと思うラウロであった。

 それにラウロにはこれから『お楽しみ』が待っている。優香の膨大な欲望の白糸は、ラウロにとってみればそのまま『叶えてあげたいおねだり』と同義だ。

 使命といっても過言ではない。

 優香さんはムッツリなので直接おねだりなんてできないのだ。

 ラウロは自分が夢魔でよかったとほとんどはじめて思った。

「……え、あの……ラウロ、さん? 」

「ん? なぁに、優香 」

「…………」

 優香は今、馬車の中でラウロに乗っていた。

 馬車に乗っている、で、終わらないところがラウロさんのクオリティである。

 転移陣のある塔から出ると、既に御者が馬車を整えて待っていた。

 テーマパークのハロウィンイベントに出てきそうな配色の暗い……しかしゴシックな馬車に優香が若干気後れした隙をついて、ラウロがひょいとお姫様抱っこで抱き上げ乗り込んだ。

 突然の事に固まって対処が遅れた優香が気付いた時には、ふかふかな座席に座るラウロを跨いで抱きつくように座らされていたのだ。

 ラウロが馬車の壁をコンコンと叩くと、軽快な蹄の音を奏でて馬車が走り出す。

 優香はふと違和感を覚えた。

「全然……揺れないんですね……? 」

 あまりに近いラウロとの距離にドギマギしながら、視線を逸らしつつ言う優香に彼は甘い笑みを浮かべる。

「本来はお尻が浮くほど揺れる悪路なんだけれどね、この馬車は『残念ながら』魔道具の一種なんだ 」

「……え――ッ?! 」

 ラウロの『残念ながら』と言う言葉の意味がわからず、優香は思わず困惑して彼を見て――けぶるほどの色香を放つラウロの視線を直視してしまった。

「『馬上』では無いのが残念だけど大丈夫、ここにあるレバーを下げると本来の揺れが戻るんだよ? 」

「ッアン?! 」

 そう言って、ラウロが優香のスカートにスルリと手を差し入れた。

「あ、あの、ラウロさ―― 」

「俺の手は塞がっているから、自分でボタンを外して優香。俺に『見せなさい』」

 ――ゾクッ

 今までになかった有無を言わさぬ命令するような口調。

 甘さよりも支配者のような強さが宿るラウロの瞳に、優香の身体は一瞬で泡立った。

「ぁ……ああっ?! 」

「早くしないと気持ち良くなってしまうよ? 」

 ラウロを跨ぐように対面で座らされている優香だ。ラウロが脚を開けば自動的に優香のそれも開かれて――無防備になった中心、下着のクロッチ部分の傍から指が差し込まれた。艶かしく動いては優香の快楽をこれでもかと引き出した、あの指先が再び我が物顔でソコを蹂躙しようとしている。

「ほら早くしなさい 」

「んっ……ぅうっ……うあっ?! 」

 優香は半ばパニックになりながら、言われるがままにブラウスのボタンに手をかけて、たどたどしく開いていく。

 

(ああ……可愛いな…… )

 なんの疑いもなく、自分の命令に従ってしまうツガイの姿が愛おしい。

「んっんんっ……あ、ま……待って…… 」

 ジワリと快楽に瞳を潤ませながら懇願する優香を見ながら、前髪に隠れた瞳を暗い慾望で光らせたラウロはソレ答えない。

「アッ……指待って……まだ……あ――挿っ―― 」

「濡れるのが早いね優香、素直で可愛い……濡れたほうが優香が好きなこの豆も気持ち悦いもんね? 」

 そう言って愛液を纏わせた指先が、クリクリと悪戯するように優香の豆を優しくこね出したからたまらない。

「うっううー……んっ……や……やぁ―― 」

「恥ずかしいね、優香。御者に君の可愛い声が聞こえてしまうよ?いいの? 」

「ッ――! 」

 優香は今気付いたとばかり、目を見開き真っ赤な顔でラウロを見た。

「ふふ、溢れてきた……声を我慢しても優香が気持ちよくなってる音は聞こえちゃいそうだね? 」

 ラウロの言葉にジワリと涙を滲ませた優香の瞳には、微かな期待――そう、彼女は若干ではあるが『そういう願望』がある。

 率先して人に見られたい訳では無いようだったが、『気づかれてしまっているかもしれない』『聞こえてしまっているかもしれない』そんな状況下で恥ずかしいと思いながらも感じてしまうような、そんな風に支配されたいという願望があった。

 ……平たく言えば、ちょっとMっ気があるのだ。

 その証拠に、先程から蜜壺はヒクヒクぱくぱくと期待に震えているし、豆も可愛らしくプクリと硬くなって、その形を感じられるようになってきている。

「ほら、僕に舐めて欲しい所を差し出しなさい。上手に出来たら、優香のお願い聞いてあげるよ? 」

「うう…… 」

 優香は泣きそうな、恥ずかしそうな表情でブラウスのボタンを外し終えて――ブラをチラリとズラして薄紅色を覗かせると、ラウロを見た。

「俺の口はここだよ、優香? 」

 少しだけ舌を出して、誘うように唇を舐める夢魔に優香は息を荒くして――ラウロの頭を抱え込むようにソコへ引き寄せた。

「アッ――?!」

 優香がラウロへ胸を差し出したと同時、下から逞しい楔が突き刺さった。

「ッ……本当に、君の中は凄いな――夢魔である俺が持っていかれそうになるなんてありえないよ……でも――」

 そこまで言ったラウロの腕が馬車の狭い

 ソファの脇に伸びて――

 ――ガシャンッ

「んんっ?!!……ふぁっ!あっ?!んんっ!」

 それまで全く揺れを感じなかった室内が激しく揺れ出した。

 ――ガラガラガラッガシャンッ……ガッ……ガラガラガラ、ガンッガコンッ

「アアンッ!キャッ……ああっ……らう、ラウロ?!アアッ!」

 前へ後ろへ右へ左へと跳ねるように翻弄されながらも優香自身はラウロの腕が支えているので、転げ落ちるというような心配は無かった。なかったが……

「きもちよさそうだね、優香」

「ああっやん!」

 ――ガコンッガラガラガラ、ガンッ

「きゃあっ?!あ……や、アアッ!」

 優香の身体を、腰を支え胸を舐め食むラウロごと揺れる中で、不意に深く予想外の場所をえぐられたりガラガラという振動がまるでバイブのように細かな振動をラウロの楔に与えて、凶悪さが追加された。

 ただただ彼の上で踊らされる状況に優香は訳が分からなくなった。

 しかし――――

(きもちい――ッ!!)

『胸がすごい揺れ方してるの、優香は気付いてないんだろうな……すごく夢中になってる、かわいい』

(――?!!?!)

 それどころでは無いタイミングで再びラウロの思考が流れてきた。

(もしかして、繋がってる時は聞こえ――?!)

『白糸では馬上セックスに興味があるって感じだったからコレももしかしたらって思ったんだけど、正解だったみたいだ……すごくエッチな表情して感じてる……かわいい優香』

「いやぁっ?!アッあん、だ、駄目……見ちゃダ……」

 馬車に激しく揺らされながら、ソレをジッと見ていた彼の思考が恥ずかし過ぎて、優香は思わず彼を止めようと声を上げた……が。

『まるで俺のに夢中になって優香がこんなに激しく腰を振ってるみたいだ……腰が勝手に動くくらいに感じて、でもソレを見られたくなくて涙目で俺を見てる……』

「ち、違っ……アアッ止まっ……止まらなッ――いやああっ!!」

『気持ち良過ぎる時「嫌」って言う癖も、優香が自慰してる時の癖を知らないとわからないからね……本当、夢魔で良かった』

(?!!?!!?!)

 ラウロの聞き捨てならない思考の声。

 優香は一瞬でその意味を理解する。

(わた……私が一人でしてるのも……見た……?!)

 ――ゾクッ

 ぶるぶるっと震えた優香は、恍惚の表情で一瞬気をやった。

 ――ガラガラガラ

(ミラレタ……ミラレテル……全部――)

 優香はうっとりしたまま、ラウロの支えに身を預けて、不規則に揺れる馬車の揺れにされるがままとなった。

「あっ……あふっ……きゃっ……ああ……」

『ああ可愛い……俺の落ち人……』

 その時、くにっとラウロが優香の豆を摘んだ。

「ねえ、優香。すっかりぷくぷくになっちゃったコレ、可愛いから舐めたいんだけど、いい?」

「アアンッ!」

 優しいタッチでくにくにと摘みながらラウロは続けた。

「このままだと無理だから、精神体で――」

「アァァァアア!!」

 妖しく笑った目の前のラウロはそのままそこにいて、対面で座っているにもかかわらず、確かにヌメヌメとした何かが優香のソレを捉えた。

 優香の意識は完全にここにあるのに、精神体のラウロが優香の精神体のソコを舐め始めたのだ。

「最高だよ優香……最高に綺麗だね……可愛いよ」

 思考では無く、直接言われたその言葉もどこか遠い。

 優香は自分が今どんな顔をしているのかもわからない、気持ち良過ぎて口を閉じる事も、流れる涙を構う事もできない。

 しかし、夢魔をツガイに持つと言うことの意味だけは少しずつ理解しはじめていた――