――カタリ
ベッドサイドのテーブルに何かが置かれた音で希美子は目を覚ました。
「……ジークヴァルト? 」
「……飯だ、食えるか? 見よう見まねだが……食えるモンにはなったが 」
そう言って、すっかり暗くなってしまっていた部屋の明かりをつけてると希美子の目に飛び込んできたのは――和食だった。
「お雑炊……? 」
「気分が悪いなら流動食の方がいいだろうが……失敗した訳じゃねぇ 」
(失敗したんだ……? )
そう、失敗だ。
ジークヴァルトはご飯を炊こうとしたのだけれど、水加減を間違えてお粥が出来てしまったので「それなら」と味噌汁用に出していたネギに似た野菜と卵を入れてみたら『雑炊』が出来上がった。
「じ……ジークって何しても天才なんだね……? 」
希美子が思わず顔を痙攣らせたのを見て、ジークヴァルトは眉間の皺を深くした。
「あん? お前が嫌味を言うなんて珍しいじゃねぇか、不機嫌になるって言うのは本当らしいな? 」
「ちっ違うよ?!本当に凄いんだって! 病人食の最適解だよ?! いや別に病気じゃないんだけどね?! 気持ち悪さもあるし、食欲も無いし、白いご飯よりもお雑炊の方が嬉しいの、本当だよ?! 」
「……そうかよ 」
そう言ってジークヴァルトはベッドサイドに腰掛けて雑炊の皿を手に取ると――ひと匙すくって希美子の口元に差し出した。
「……え 」
「なんだ? お前、熱いのも比較的平気な方だろうが。俺に冷まして欲しいのか? 」
「え、いや……ええ?! 」
突然訪れた「あーん」に希美子はプチパニックを起こした。
あの、ジークヴァルトが。
いつも不機嫌顔のジークヴァルトが。
敵に一切容赦無い……A級冒険者のジークヴァルトが。
もふもふ狼獣人のジークヴァルトが。
「……さっさと口開けねぇと無理やりねじ込むぞ。それともそう言うのが好きか? だったらこれからアレの時は――」
「食べます食べます食べます食べます!! 」
希美子の脳内が漏れていた訳では無いだろうに凄まじく不穏な空気と言葉を発したジークヴァルトを前に、慌てて希美子は目の前のスプーンを頬張った。
――そして、目を見開く。
「ちょ、ジークこれ?!お出汁?!お出汁がきいてるよ?! え?! すご……え、天才なの?! 」
「……………… 」
本気で心の底から驚いた様子の希美子に「本当にバカにしてねぇんだろうな? 」とちょっと思うジークヴァルト。
彼からしてみたら希美子が味噌汁を作る時、毎回やっている事を真似しただけだ。
つまり削り節を作って、昆布と一緒に煮立った湯に入れて出汁を取っただけだ。
あんなもの、見てれば子どもでも出来るだろうとジークヴァルトは思うのだが、目の前の女は本気で感動しているのか目に薄っすらと涙を浮かべながら嬉しそうに食べている。
……まあ、ようは悪い気がしないのだ。
最初の戸惑いはどこへやら。
希美子は次々とジークヴァルトが差し出す匙を、餌付けされる雛のようにパクついていく。
……食欲が無いと言った口で。
「……ご馳走さまでした 」
「……ああ 」
最後は空になった皿をみて少し哀しそうにしていた。
「まだあるが…… 」
「?!!?!!」
ガバリとジークヴァルトを見上げた希美子の瞳は、見たことが無いくらい輝いていた。
「…………待ってろ 」
なんかちょっと複雑な気持ちのジークヴァルトであった。
希美子がおかわりもペロリと平らげた所で、ジークヴァルトは洗浄魔法を希美子と自分にかけると再びベッドへ横になった。
希美子を後ろから抱き込むように、お腹へ手を当てて獣化してから希美子に尻尾を差し出した。
(……うん、もふもふ気持ちいい……うん、気持ちい…… )
しかし落ち着かない気持ちで希美子はモゾモゾとした。
(たくさん寝ちゃって眠れない……今はちょっと痛みも引いてるし…… )
そのせいで先ほどは気にならなかったものが気になって仕方がない。
好きな人の手がずっと下腹部にある。
もふもふも腕の中にある。
背中に当たる逞ましい胸と、首筋に当たるジークヴァルトの息……希美子は――
「……おい、何を発情している 」
「うううううっ……だって……だって…… 」
希美子は生理中――発情しやすかった。
ずっとナカがジンジンしているし、熱を持っている。
恥ずかしい話、こうして痛みが無い時に感じやすいアソコを少し捏ねては果てた後に眠る。それが毎回の事だった。
しかし、そんな事をジークヴァルトに言える筈も無ければ、せっかく添い寝してくれているジークヴァルトを追い出すのも嫌だ。
(うううっ……どうしよう……どうし……――――っ?!!?! )
「ジークヴァルトさん?! 」
「大人しくしてろ、今突っ込むような事はしない。だが―― 」
お前はイッておけ――と耳元で含むように言われた。
「ァアンッ?! 」
「……もうこんなに腫れてやがる、コレの『消臭効果』というのも考えものだな 」
スグレモノの異世界ナプキンは希美子のアレの匂いも消してしまっていた。
そしてコレは洗浄魔法も付与されている、経血だけでなく愛液も浄化してしまうのだ。
(ま、まあ……ジークヴァルトの手を汚さなくて済むし……)
と、ホッとしたのもつかの間――ジークヴァルトの指が蜜壺の入り口を掠めた後、豆に触れられた時――その指は粘液を纏って滑りよく希美子のソコをこね回しはじめた。
「――え、なんっ?!なんで……?! 」
ジークヴァルトは手のひらの表面数ミリに魔力を纏わせて『スグレモノ』の無効効範囲を作り出したのだが、そんな事を説明してくれるジークヴァルト様では無い。
「――なあ、おい希美子。コレはなんだ? 」
「えっ……アンッ?! あっあ……アアっ?!」
「まるで俺が口に含んでいたぶり倒した後みたいに硬くなってやがる――こっちもだ 」
「やあっちくび一緒に……は、ヤァ……」
「あ? 嫌じゃないだろうが? 媚びた声出しやがって 」
ジークヴァルトに横抱きにされた希美子の下から伸びてきた手は、アッサリと服の中へ侵入し――希美子の乳首を乳輪ごと摘み上げると、その先っぽを人差し指の腹で優しく撫でられはじめた。
下では豆を摘み上げてクリクリと捏ね回されて、希美子は最速で絶頂まで駆け上がっていく。
「ヤッ、アッ……ァ……あぁっ?!」
「――本当に卑しいなお前は 」
嗤いを含んだ低く甘い声が希美子の耳元で囁く。
「痛えだなんだと言いながら、俺の指で感じては容易く快楽を貪る。……腰が震えてるがそんなに気持ちが悦いのか?こんなにイヤラしい女を俺は他に知らない。だが―― 」
――俺はイヤラしい女が嫌いじゃない
「アッ!!アァァァアアッ――――」
胸を鷲掴みにされたまま乳首を捏ねられ、豆を押しつぶされたまま小刻みに振動を与えられ、耳の穴に舌を差し入れられて――――希美子は果てた。
「はぁ……はぁ……」
息を乱す希美子の衣服を整え、髪もすくように撫でるジークヴァルトの行動に、希美子は懇願するような視線を向けた。
「……希美子、なん――「捻じ込んで 」あ? 」
「下は我慢するから……ジークヴァルトの、欲しいの。上から、乱暴にして……? 」
「お前調子が―――― 」
ジークヴァルトがそこまで言うと、希美子は亜空間から例のポーションを取り出し一気に煽ろうとして――
「――馬鹿か! また痛んだらどうする?! 」
「ジークヴァルトのおちんちんたべたい 」
「」
……果たしてお願いは――――半分叶った。
乱暴に、は、却下。
「……………… 」
ジークヴァルトは希美子の顔を跨ぐと、半開きの口に己の欲を捻じ込んでいく。
「んっふっ、んぐっ――んんっ 」
「……………… 」
恍惚としてソレを受け入れる希美子の喉まで行くような事はせず……しかし先程から尻尾が希美子の手によって盛大に犯されている。
毛並みに指を差し込まれ、撫で上げられ、さすられ、根元をくすぐるように愛撫され、危うく変な声が出そうになってすんでのところで止めた、が。
息子が正直者なせいで、希美子に弱点がバレた。
「んっんっ!ちゅうっんぐっクッ……」
「……ッ…………――クッ! 」
希美子はジークヴァルトの尻尾の付け根をくすぐったり、撫でてみたりしながら根元を持ち上げるように下からトントンと叩いて見せた時――ギンっと力を持ったジークヴァルトのペニスに我が意を得たりとばかり攻め立てた。
――トントントントン……
裏筋を舌全体で舐め上げ、口に含んだまま舌で八の字を描くように先っぽを舐めあげ吸い付き啜り上げる。
「んっ……く……てめぇ希美……こ……クッ……」
――トントントントン……
いつも見ていた眉間の皺が色っぽく感じる。
――トントントントン……
ぐっと上体を起こしてジークヴァルトの先っぽを喉へ導くと、ビクリと彼の身体が震えて嬉しくなる希美子。
――トントントントン……
(ジークの好き……おっきい……可愛い……)
――トントントントン……
ジークヴァルトの尻尾を弄ぶ手の片方を、彼のペニスの根元を握りこむ事にあて、擦り上げる。
――トントントントン……
――くちゅ、くちゅ……くちゅくちゅ……
「あっ?!ぐっ――く、ぅあッ?! 」
出来るかぎりを口に含んで、吸い付くように口をすぼめて希美子は抜き差しを試みた。
――トントントントン……
――くちゅ、くちゅ……くちゅくちゅ……
――ちゅっぱ……ちう……ちゅちゅぅぅうッ
「あぐっ――く……そ、がぁ――ぁァアッ!! ――――――ハッ……ハァ……は………………おい、馬鹿もう吸い付く、な?!オイ!! 」
――ごっくん。
「………………」
吐精したにも関わらず、しつこく吸い付いていた希美子の頭を引き剥がしたジークヴァルトは、希美子の喉が鳴ったのを見て固まった。
「……うん、すごい、全然飲める。もういっぱ…… 」
――ぺしんっと、頭を叩かれた。
「……寝るぞ 」
「あ、うん 」
ジークヴァルトが後戯ナシとは珍しい。
無言でジークヴァルトが寝巻きを着込むのを眺めていた希美子は、ソレに気付いたジークヴァルトの腕に抱き込まれると、そのままベッドへ二人倒れ込んだ。
――ドッドッドッド……
(……え? )
ジークヴァルトの心臓の音が、いや、もはや振動が希美子の耳を打った。
表面上、あんなになんでもない無表情を装っていたのに……。
希美子からは今のジークヴァルトの表情はうかがえない。
(……いつか見れるかな……? )
これから先、ずっと一緒にいるのだし。
きっと見られたく無いのだろうし……。
彼の事だから、本当はこの心臓の音だって隠したいに違いないのに。
「……おやすみジークヴァルト 」
「………………ああ 」
――ドッドッドッド……
なかなか落ち着かない心臓の音、その回数だけ好きだと言われている気がする。
そんな幸せな子守唄を聴きながら、希美子は瞳を閉じた。
最後まで――心臓の音が落ち着くまで聴いていようと思ったのに、いつのまにか眠っていた希美子が翌朝聴いた彼の音は、とても安らかな音で……。
この音も大好きだなと、希美子は思ったのだった。