8.落ち人さんのおねだり※

 うっとりするような余韻の中、ソファに倒れ込んだ希美子に、ジークヴァルトは柔らかな口付けを――頰へ、コメカミへと落とした後の事だった。

 希美子のソコに温かな先が宛てがわれた時、此処が何処だったかを思い出してしまった希美子が内心慌てはじめた。

(こ、此処!神殿だった?!しかもなんか待合室ぽい?!)

 これではいつ誰が入ってくるかわかったものでは無いと希美子は先程までの自分の痴態を思い出してサーッと顔を青くした。

 ずっと希美子を見ているジークヴァルトがそれに気が付かない筈もなく、何となく希美子が何を考えているのか察し宥めるように自身の頭を希美子の頰に擦り寄せた。

 

「さっきユリウスに、お前は昨日来たばかりだと言っておいたろうが。今、俺たちが致してるのも奴は想定済み――一応この空間は魔法で隔離しておいたが……解いた方が興奮するか?」

 とんでもない事を言われて希美子はブンブンと首を横に振った。

 ジークヴァルトの言葉を要約するに、先ほどの言葉――

『コイツは足を怪我している。治療するから部屋を貸せ、それから――コイツが俺の前に現れたのは、昨日だ。……意味は、わかるな?』

 コレは『まだ魔力定着前』だと暗に伝えたと言う事だ。

 それに対してユリウスが、希美子達に部屋を貸したと言うことは――それなら、治療がてら此方で一発致しておけと、風情の無い言い方をするならばそう言う事である。

 ちなみに、この意訳をそのままユリウスに言えば、美貌の麗人から凍るような蔑む表情が向けられるだろう。

 高潔な神官長様はそんな下品な物言いはしないのである。

「――希美子」

 希美子に宛てがったまま、珍しくジークヴァルトが話しかけてきたので、希美子はどうしたのだろうとキョトンとした表情で小首を傾げるとジークヴァルトを見上げた。

「どんな風にされたい?お前の好きなようにしてやる」

「っ――!?」

(すすすすすっ好きなように?!す、好きなようにって……え?!……ええええっ?!)

 朝、希美子を好き勝手な感情に任せて揺さぶったジークヴァルトは、今回は希美子の希望を聞いてやろうと言う事らしい。

 が、しかし、なんたる羞恥プレイだろうか。

 突然、己の性癖を晒さなければならない状況に追い込まれた形の希美子である。

「え……えっと……え……あ、うぅ……」

 しかも、昨日はほとんど最中に言葉を発さなかったジークヴァルトが「どうした?何でもいいぞ」と言いながら、再び額へ頰へ首筋へ柔らかな口付けをしてくるので、ますますもって希美子は羞恥が煽られた。

「あ、あの……」

 このままでは、恥ずかしさは募る一方だと判断した希美子は、意を決して――しかし目をギュッと瞑って言った。

「は、激しく!ジークに求められたいです!」

「……」

「あと、口が悪くても……いいから、黙って無くて……いいよ?」

「…………」

「それから、神官様にも『ジーク』って呼ばれてたでしょ……?アレの時だけでいいから、私は……『ジークヴァルト』って呼んでも、いい?」

「………………」

「親しい人にしか呼ばせない、愛称みたいな感じかなって思ってたのに、神官様も呼んでてちょっと……なんて言うか、えっと、せっかくカッコいい名前だから、ちゃんと呼びたいなってのもあったし……ジークヴァルト?」

 黙らないでとおねだりした筈なのに、先程からずっと黙っているジークヴァルトが気になって希美子はずっと下向きにしていた視線を恐る恐る上げて様子を伺う。

 と、其処には。

「――良い、度胸だ」

「ひっ?!」

 何故か目を細めて怒りを露わにしたジークヴァルトが居た。

 無意識で彼を盛大に煽ってしまった事に、希美子はまだ気付いていない。

 ――

 ――――

「あれ?神官長、あの冒険者まだ終わってないですよね?」

 所変わって、此処は神殿の一室――ユリウスの執務室である。

 ユリウスの執務室に書類だけでも届けて置こうと訪れたヨナスが、執務机で黙々と作業しているユリウスを見て目を丸くした。

「……あの落ち人様が来られたのは昨日らしい。まだまだ魔力が不安定な時期だからな、落ち人様が怪我をしていた事もあって部屋を貸した――書類なら置いておけ、それからコレだが……」

 何のことも無いように、ユリウスがヨナスへ新しい仕事を振ってくるがヨナスには一つ気になる事があった。

「……妙子ちゃ……神官長の落ち人様を紹介しないんですか?落ち人様は皆んな同じ世界から来たんですよね?」

「妙子は今日は体調を崩して休んでいる、落ち人様には彼女の話をするつもりだが、紹介するとしても日を改めてからだ」

(――嘘だ)

 そう、ヨナスは思った。

 神官長ユリウスが、自分の落ち人を溺愛しているのは周知の事実。

 彼女が体調を崩していたとして、こんなに淡々と仕事をしている筈が無いのだ。

(また何かのプレイ中か――もしくはあの日なら神官長が大袈裟に心配して半ば軟禁状態にしていると言う可能性もあるか)

「ま、いっか。そうそう神官長、祈りの間の準備は整っていると言う報告も上がってますよ」

「ご苦労だった、例の部屋の亜空間化が解けたら落ち人様を迎えに行って直ぐにそちらへ向かうと伝えておけ」

「了解でっす」

 神官長と妙子ちゃんの時を考えたら一体いつになるやら――そんな事を思いながら、ヨナスは祈りの間の同僚達に何か差し入れでも持っていくかと考えを巡らせながらユリウスの部屋を出たのだった。

 そして、何事も無かったかのように仕事を続けたユリウスがポツリと呟く。

「そんなに時間はかからない筈だ、国が奴に依頼していた件――果たしてどうなる……国が強引な手段に出れば、神殿が動く事になるが――」

 美貌の麗人が物思いにふける光景は、まるで一枚の絵画のようであった。

 ――

 ――――

「じっ……ジーク……あっ!」

「ほら、名前を呼ぶんだろうが?」

「あっあっ――ジーク……ばるとっ!あんっ……」

「――発音がなってねぇ、もう一回だ」

 どうしてこんな事になったのか、希美子は壁に手をつかされて、前後不覚になりながら必死にジークヴァルトの名前を呼んでいる。

「じぃく……あっぅあるっ――ああっ」

「お前は本当に此処が好きだな?さっきも俺の頭押し付けやがって」

 後ろから激しく責め立てられながら、ぷくりとした豆を摘まれて、希美子は膝をガクガクと震わせた。

 ズルズルと崩れていく希美子に、それでもジークヴァルトは許してくれず、律動もそのままに、あろう事か摘んだ豆をクリクリと捏ねだした。

「やあああんっ!」

「あ?『嫌』じゃねぇだろう?」

「やっ……アッ……なんっで、なんでぇ――」

 摘まれ捏ねられるなんて過ぎた刺激で痛みがありそうなものなのに、口の悪さとは裏腹にそのタッチは優しく希美子の快感だけを引き出してきて、そのギャップに訳が分からなくなる。

「きゃんっ?!」

 崩れ落ちて膝をついてガクガク震えている希美子にそれでもジークヴァルトの攻めは止まらない。

 肉芽を捏ねる手とは反対の腕が伸びてきて、希美子の胸を柔らかく揉み始め、指先がその頂きをくにくにと潰してくる。

「――好いザマだ」

「ッ……声ぇ……だめ……」

 耳元へジークヴァルトの低い声が吹き込まれて希美子の子宮へ響いていく。

「もっと俺を興奮させろ」

「アッ……――っ!!」

 そして始まる激しい律動。

「あっあっあっあっ――」

「良さそうだな?っは……お前、此処が好きだろ――?よく、締まる……ふっ……」

 奥にジークヴァルトの先が引っかかり、そのままコリコリと中を言わせながら激しくされると、希美子の頭がキュウっと締まる感じがして目の前が白くなって行き――絶頂前の白く深いトンネルを高速で走って行く。

 ――目の前が、白い……

「ッァ!――――っアァ――」

 動物をシメた瞬間のような、鳴き声ともつかない小さくも高い声を上げて、希美子ははじめての深さを味わっていく。

 ――――もっと、もっといける……

 ビクビクと震える希美子を両腕で押さえ込むように力強く抱きしめ、その震えを味わうように嗤ったジークヴァルトは希美子の高い声が続く間、ずっとコリコリと希美子の奥を攻め続けた。

 希美子の好きな快楽の芽も、同時にくにくにと弄ばれ、希美子は堪らなくなる。

「――――ッ――」

 コリ、コリ、コリ、コリ……

 くにくに……くにくに……

「ァ――――」

 コリ、コリ、コリ、コリ……

 くにくに……くにくに……

「――――――」

 コリ、コリ、コリ、コリ……

 くにくに……くにくに

 ――――――――っ!

 きもちい、きもちい、きもちい、きもちいいいい――――――――

「――――ッ――――」

 コリ、コリ、コリ、コリ……

 くにくに……くにくに……

「ァ――――――」

 コリ、コリ、コリ、コリ……

 くにくに……くにくに……

「――――――――」

 コリ、コリ、コリ、コリ……

 くにくに……くにくに

 ――――――――――――ッ!!

ジークヴァルト、ジークヴァルト、ジークヴァルト、ジークヴァルト――――――――

「っ――アアァァアッ!!」

 どくんっ――と、希美子の最奥にジークヴァルトの子種が打ち付けられ、最奥に広がる幸せな温かさを感じながら、くたりと脱力した希美子を優しく抱きしめ続けるジークヴァルト。

 荒い息を続ける希美子を優しく抱きしめ、落ち着くのを待った。

 やがて、希美子が長い息を吐いてフルリと震えたのをきっかけに、ジークヴァルトの大きな手が、希美子の肌を撫で始める。

 希美子は――再び、あの天国のような甘い余韻が始まる予感に震えた。