7.狼獣人さんの勘違い※

『コイツは足を怪我している。治療するから部屋を貸せ、それから――コイツが俺の前に現れたのは、昨日だ。……意味は、わかるな?』

 歓迎すると言ったユリウスに、サクッと要求をしたジークヴァルトだったが、それを咎められるような事もなく、神殿の部屋を一つ貸し与えられた。

『私は、仕事を片付けに少し戻りますので、ごゆっくり』

 そう言ったユリウスの言葉の意味を、その時の希美子は理解できなかったが、直ぐに思い知ることとなった。

 部屋に入るなり、中にあった応接セットのソファに座らされてジークヴァルトに足を取られた。

 本日八度目のこの行為に、希美子はふるりと身体を震わせる。

(この……絵面、本当に凶悪……萌え死ぬ萌え泣く萌え悶える……!!)

 そう、希美子が靴擦れをしてもジークヴァルトに申告しない理由はこれであった。

 ジークヴァルトは希美子の目の前に跪き、静かにその足を取ると丁寧に履物を脱がせて来る。

(なんか……こう、プレイのようで……ああヤバイ!濡れたらバレる!靴擦れの傷で出た血にも反応する狼獣人さんのスペック舐めちゃいかん!耐えろ……!耐えるんだ希美子!!)

 内心身悶える希美子を余所に、履物を脇に置いて、左手で優しく足を少し持ち上げるとジークヴァルトはスルリと右手の指先を足の甲へ滑らせる。

「ッ――!……っ……っ!」

(えまーじぇんしー!えまーじぇんしー!!ジークさん!自分の指がエロいの自覚して!凄いの!今、アソコに直撃したよ?!ビビビビビって!何かが走って来たからね?!)

「何震えてやがる、怒ってねぇから怯えんな。あと、怒らねぇからヤバくなったらちゃんと言え、俺は口が悪いだけでそこまで短気じゃねぇ」

 いや!そうじゃない!と、希美子は盛大にツッコミたかったが、さすがに治療の度、献身的に治療を施してくれている人間の手に欲情してムラムラするから言えなかったとは自己申告出来なかった。

「ユリウスが来るまで少しある、休ませておけ」

 そんな希美子の気持ちなど分からないジークヴァルトは、治療を終えると手に取っていた足をふわふわの絨毯の上へ置き――その際、希美子の足を取っていた手を抜く時、彼のエロい指先が足の裏の真ん中を撫でるようにスルリと滑って行った。

(――っ――――っ!!)

 希美子は自分の中心が断続的にヒクヒクピクピクと蠢いている事に気付いていた。

 完全にスイッチが入ってしまっている。

 一方、ジークヴァルトはもう片方の靴も丁寧に脱がせて再び希美子の素足を手にとった。

(クソッ……コイツは何をそんなに震えてやがる。さっきまであんなに五月蝿かったヤツが、俺に……怯えてるのか……?)

 その考えが頭を過ぎった時、ジークヴァルトの胸に言いようの無い程の喪失感が広がった。それは、焦りを生み――彼を混乱させて行く。

(コイツは、繁殖行為は……相手を深く知る事が出来るのだと言った。裏を返せば、してねぇ今はどうなんだ)

 自分の口が悪い事を自覚しているジークヴァルトは、自分の発した言葉を全てそのまま受け止める人間と、その後どうなったかを思い出す。

(――クソ!)

 ジークヴァルトにとって、他人とは大概どうでも良い存在であったが、希美子は違う。

 しかしジークヴァルトは、拗れそうな人間関係の修復など殆ど試みた事が無いのだ。

 その上、今現在のように、焦りと焦燥で心が掻き乱された事なんか殆どない。

 ――だから、それは殆ど衝動だった。

「え、えええ?!!」

 気付くとジークヴァルトは希美子の足の爪先に口付けを落としていた。

 衝動の末に起こしたジークヴァルトの無意識の行動に、今度は希美子がパニックになる。

 彼女自身、凶悪と称した絵面が、その先に逝ってしまった。

(ええちょっ!待って?!爪先チューはヤバイ!!凄くヤバイ!特に今はヤバ――あ……)

「……あ?」

 その時、ジークヴァルトの鼻が――発情した女の匂いを捉えた。

 あれ?とジークヴァルトは思う。もしや自分は相当あさってな勘違いをしていたのではないかと。

「…………」

 そして事態は希美子の想像の限界を超えた展開となった。

 ――ぴちゃり……

「ひうっ?!!」

 ジークヴァルトは、希美子の足――その小さな薬指に舌を絡ませてきたのだ。

 ――ぴちゃ……ちゅく……ちゅ……

「ん――!ん――!ンンッ!」

 薬指の指先を口に含んで、柔らかく嬲るように絡ませ、そして柔らかく吸うと……なるほど、先ほどからジークヴァルトが目にしている震え方と全く同じ様子で希美子が震えている。

 ジークヴァルトの舌が、そのまま薬指と中指の間をくちゅくちゅと音を立てて嬲った時、希美子は堪らず嬌声を上げた。

 素直に快楽に身を委ねる目の前の女が愛しくて仕方がないのか、ジークヴァルトは目を細めて希美子を見つめながら指先の一つ一つ口に含んで舐め転がして行く。

 希美子は座っているのもやっとと言った様子で、ソファに崩れ右肘を付き、左手でなんとか上体を支えながらも、その目はジークヴァルトの行為に釘付けになっている。

 先程まで感じていたジークヴァルトの焦燥が消えていく。

 代わりに感じたのは、腹の奥がくすぐられる様な甘い温もり。

 思わずククッと笑ってしまったジークヴァルトを直視した希美子から、濃密な発情の香りが立ち込めたのをみとめて、ジークヴァルトは次の段階に進む。

 濡れた足を優しく置くと、希美子の両脚をゆっくりと開かせた。

 じわじわと暴かれていくそれに、希美子は必要以上に羞恥を煽られるが、その瞳にはどうしても期待の色が宿ってしまう。

(ジークがエロい、ジークがエロい、ジークがエロい!ジークが……――っ?!)

 開かされた内腿に、ゆっくりとキスをしたジークヴァルトが――そのまま頭だけをスカートの中に入れて来る。

 思わず脚を閉じそうになるが、両膝はガッチリとジークヴァルトの手によって固定されてしまっている。

 無防備な花園に、無遠慮に押し入る犬のようなその様子に希美子の興奮は限界まで跳ね上がった。

 希美子からは、スカートの中が見えない。

 ただ、希美子の股の下あたりにジークヴァルトの頭があってスカートの布がそこだけこんもりと膨れている。裾から覗くジークヴァルトの頸に、希美子はひどく唆られた。

「――アッ!」

 その時、硬さと柔らかさをパンツのクロッチ越しにピタリと当てられ、それがジークヴァルトの鼻と唇だと理解する前に、まるで深呼吸するみたいにゆっくりと息を吸われたのがわかった。

「――やっ……ジーク、恥ずかし――あっ!」

 希美子の制止も聞かず、希美子の匂いを堪能するかのように何度も繰り返されるソレに、さすがの希美子もジークヴァルトの頭を手で押し返そうとしたが、ビクともしない。

「いやぁ……だ、――ね、恥ずかし……恥ずかしいからぁっ」

 恥ずかしくて堪らないのに、吸われるたびに希美子の花園からは蜜が湧き出てきて、下着はその意味を無くしていく。

 と、その時――

「きゃっ!」

 ジークヴァルトは、クロッチの横から舌を差し入れて来た。

 キスの時には感じないが、人のソレとは大きさの違うジークヴァルトの長い舌が、希美子の花園を蹂躙しはじめた。

 溢れた蜜を全て舐め尽くすかのように希美子のショーツの中で動き回る。

 時折、希美子の蜜壷にまでにゅるりと侵入しては彼の鼻先が快楽の芽を掠め、舌は壷の中の蜜を無遠慮に舐め取り続ける。

 希美子はソレが一番気持ちよかった。

 彼の頭を剥がすために置いていた筈の手で、彼の頭を己の股の間に押し付けた。

 わかりやすい希美子のおねだりをジークヴァルトは聞き入れる。

 希美子の蜜壷いっぱいに入った己の舌を出し入れするように蠢かせて、クロッチ越しに触れていた芽を、直接甚振る為に鼻先で布を押しやりぷっくりと膨れたその場所にピッタリと鼻先を宛てがった。

 しばし、その匂いを堪能してやる。

「やっ……また――におい、嗅いじゃ……やぁっ」

 そう言いながらも、ジークヴァルトの頭を押さえつけたその手は一向に力を弛めない。

 そして、ピタリと芽に付けられた鼻がそのままゆっくりとソレを捏ね出した。

「っあん!」

(――きもちいい――っ!)

 

 希美子は涎を垂らしてその快楽に夢中になった。

 他でもないジークヴァルトが、犬のように己のスカートに頭を入れて、パンツの中に舌を差し入れて夢中で舐め回している。

 ジークヴァルトに何度もアソコの匂いを嗅がれた。

 ジークヴァルトの舌が、希美子の中に入っている。

 ジークヴァルトの鼻が、希美子の豆を嬲っている。

 ジークヴァルトが、希美子の恥ずかしい場所を貪っている。

(き、きもちいい――――)

 希美子の腰がガクガクと震え出した。

 グググっと膝が伸びて浮いていく。

(ジーク、ジーク、ジーク、ジーク……)

「じぃ……くぅう――っ!!」

 ビンッと脚を伸ばして、希美子はイッた。

 ――――

 くたりと力を無くした希美子の脚から、ジークヴァルトはスルリとショーツを脱がせると、再びソコへ口付けた。

 快楽を引き出すのではなく、希美子が快楽の余韻をじっくりと味わえるよう――柔らかな舌で、肉芽を優しく舐め続ける。

 時折、チュッとキスをすると、希美子はピクピクと震え――希美子は天国のような余韻を味わったのだった。