神官長〜後編〜

 ユリウスは執務室に籠った匂いを風の魔法で取り去ると、浄化の魔法で妙子と自分の汚れを取り去った。

 意識が無かったにも関わらず繋がったままであった己を彼女から抜く時、言いようのない消失感を覚えたがタエコが

「部屋に行ったらまた直ぐに」

 と言って微笑みかけてきたものだから、また立ち上がりかけたものを必死に抑えなければならなかった。

 タエコはと言うと、ユリウスの魔法を目にして「本当に異世界なんだ……」と、呟いた後ユリウスを見て「うん、異世界だ」と再び納得していた。

 ユリウスは何の事かわからなかったが、彼の美しさは彼女のいた世界ではなかなかお目にかかれない程のものであったし、何より光の加減で七色にも反射する銀髪なんて異世界でもなければ有り得ない事なので。

 そんな納得をタエコが一人でしてる間にもユリウスは亜空間から布を取り出して彼女を包みはじめた。

「え、な、何?」

「貴女を、タエコを誰にも見せたく無いので……」

「はうっ?!」

 目の前の美しい男が見せた独占欲にタエコは何かゾクゾクして、幸せみたいなものを噛み締めながら黙って布に包まれる事にした。

 布越しにギュッと抱かれているのも良い。

 意外に筋肉もある、彼の腕の力強さとか、彼の胸に寄りかかるようにしているとその逞しさとジンワリと広がり伝わる彼の温もりが妙子の呼吸を再び速くしていく。

 簀巻きとまではいかな……いくかな?な状態のタエコを横抱きにして立ち上がったユリウスは執務室を出ると早々に一番会いたくなかった相手に会う事になる。

「神官長?!やっと出てきた!何も言わずに部屋を亜空間に移動されると驚くって前にもいいましたよね俺?!」

 女癖が悪すぎて実家を追い出され神殿流れとなった男。

 ヨナスである。

「っていうか、ソレなんですか?ひと?」

「……落ち人だ」

「お、落ち人おおおお?!!」

 予想通りの大きなリアクションに舌打ちしたい気持ちをタエコの手前、グッと我慢する。

「『私の』落ち人だ。意味は――わかるな?」

 ヨナスが『怖い』と称した睨みを普段の数倍強く利かせて凄むと、ヨナスは壊れた人形のようにカクカクと首を縦にふる。

「近々の仕事は全てまとめてありますし、一週間は……」

「ひと月だ」

「――は?」

「ひ と つ き だ」

 それだけ言うとユリウスはヨナスを振り切り、タエコを抱く腕に力を込めて風を切るように歩き出した。

 一瞬タエコの身体がブルリと震えた気がしたが、己が歩く振動と相まって気のせいかもしれないと思いながらも歩く速度は一層早まる。

「ちょ?!神官長?!ひと月後には地方祭事ですって!」

「そのくらい貴様が回ってこい」

「いやちょっ……ええ?!」

 ヨナスを振り切ってからも、何人かに呼び止められその度に何故かタエコがブルリと震える。

 最初は見知らぬ土地で自分――ユリウス以外の人間の接触に怯えているのかと思ったが、どうも違ったようだと気付いたのはユリウスの自室に戻ってきた時だった。

「……ユリウスが、本当に『神官長』何だなぁって思うたび、感じちゃって」

「あと、意外と逞しいのも反則ですっ」大きな天蓋付きベッドで簀巻きのまま、きゃっ、なんて言ってタエコは照れているがユリウスは何の事やらさっぱりである。

 この世界『神官萌え』なる概念は存在しないのだ。

 ユリウスが困惑している間もタエコは

「広い部屋だなぁ……あっちはお風呂かな?すごい至れり尽くせり感、さすが神官長……くふふ」なんて呟いている。

「――タエコが望むなら、直ぐにでも神殿長になるが……?」

「へ?」

 何を思ったかユリウスは「まずあの古狸の後ろ盾を……」なんて呟きながら思考に沈みかけている。そんなユリウスをタエコは慌てて肩を揺する事で引き戻す。

「違うから!そうじゃないから?!」

「……どうせなら中央神殿の長にと思ったが……社会的地位のある男が好ましいと言うなら、私が次代の王になるか?」

「もってのほかですううう!ずっと神殿にいてくださいいいいっ!!」

 小首を傾げてとんでもない事を言い出したユリウスに、何故かタエコは『神官萌え』について熱く語る羽目になったのだった。

 ――

 ――――

「と、言うわけで、権威に萌えがある訳ではなくてですね。『神官』という役職自体に萌える訳ですよ!」

「神に仕え、それだけに価値を見出していたつまらない男の身体を暴く事に性的な興奮を覚える訳か」

「なんかちょっとニュアンスが違う?!」

 思わず突っ込んだけれど、ふと彼の言葉を反芻したタエコは「……なんか、それ、イイ」と思ってしまった。

「なに?」

「……暴くって、そのニュアンスが……最高にエッチくてイイなって……暴いても?」

「な?!あ……くっ?!」

 簀巻きから抜け出したタエコはユリウスの着ている白い詰襟の服の上から彼の胸筋をゆっくりとなぞるように掌全体で撫で回しはじめた。

 頭はコテンと彼に預けるように、甘えたようなその仕草に一瞬固まってしまったユリウスは胸を撫で回されるも為すがままの状態で、拘束していないにも関わらず脇に置いた腕を動かすまいと突っ張っている。

 撫で回しているうちに、ユリウスの乳首が服の上から微かにわかるくらいに立ち上がってきた。

「可愛いぷくぷくさんめっけ」

「くっ……ふ」

 チラリと視界に映った下半身は裾の長い上着をすでに押し上げてテントを張っていて、タエコを大いに興奮させた。

 ユリウスの乳首を服の上からカリカリと引っ掻くようにしてやれば彼は腰を跳ねさせ、グリグリと指先で押し込むように苛めてはフルフルと震える彼が可愛くて仕方ないタエコ。

「は……ぁ……」

 両手のひらを腰をなぞるように下ろしていけば、腰を仰け反らせ、それでも目を閉じて耐えるようにしているユリウスが愛しくてたまらない気持ちになる。

 目の前に差し出された胸を、服の上からでもうっすらとわかった乳首を、タエコは食んだ。

「くぁ?!」

 堪らずドサリとベッドに背中から倒れ込んだユリウスの上に跨るタエコは――

 銀色の長い髪を無造作に広げ、涙目ながらも顔をそらせる事で無防備にさらけ出された首筋を見て――辛抱堪らず食らいついた。

(髪の毛長いし大丈夫よね)

 ベロリと舐めあげ、ぺろぺろと舐め回し、少し舌が感じた塩っぱさを彼の味だと思うと愛しくて舐めては吸い付き飲み込んだ。

 ユリウスはまるで吸血鬼にでも襲われているかの様に下半身をビクンビクンと定期的に跳ねさせタエコを悦ばせた。

(ああ――可愛い、綺麗、カッコいい、素敵、いい匂い、美味しい、可愛い)

 その間も両の手……指はカリカリとユリウスの乳首を弄んだし、テントを張った肉棒はタエコのパンツ越しに既に洪水状態のアソコをグリグリと押し込むように刺激を与え続けた。

「ぃや……アッ!」

 頭をふるふると振りながらも時折視線だけで縋るような涙目を妙子におくる神官長の極上の色気はそれだけで妙子を痺れるほど興奮させてくれる。

 禁欲的な筈の神官服がエッチな箇所を濡らして汚されていく。両の乳首部分もタエコの唾液でしめらされて直視出来ないほどのエロい状態となっていた。

(ああ、エロい、可愛い……)

 胸に下半身にといたぶる様に刺激を加えながらも、唇を首筋から離した時には頰におデコに鼻にと優しくキスの雨を降らせた。

 その度に気難しそうな美人の顔が蕩けていく

 のでタエコは癖になりそうだと思った。

「っ?!ゥむ――ッ」

 蕩けた美人の唇を食べるみたいに喰らい付く。舌を差し入れ、口の中を乱暴に犯しながら、再び彼の上着の裾を掻き分けていく。

 パンツに手を突っ込むと彼の愛しい肉棒を取り出して扱きだした。

「ん――っ!んン――っ!ンッンゥッ!」

(ああ、可愛い可愛い可愛い可愛い)

 口付けながらも声を上げつつ、しかし妙子の舌に必死に答えるユリウス。

 快感に反射で腰が引けそうになるのも妙子の手から逃れまいと腰を戻してくる。

 必死になりながら決して妙子から逃げようとしないこの男が可愛くて仕方ない。

 長い睫毛に縁取られた美しい瞳は、薄く開かれ濡れている。眉間に寄せられた皺も色っぽい。

 ユリウスの口腔内を蹂躙し尽くすと、妙子はゆっくりと唇を離した。

(さっき、部下っぽい人と話してる時はあんなに隙が無さそうな神官様だったのに……)

 その時、はくっとユリウスの口が動いたのを見てタエコは耳をそばだてる。

「タ……エ、好き、ぁ……愛して……」

「…………」

 涙目で微笑かけようと頑張りながらそう言ったユリウスを見て、タエコの脳は一瞬停止して――

(あ、うん、可愛い。チンコ挿れよう。)

 それしか考えられない可哀想な状態になった。

 再び神官服を捲りあげ――露わになったユリウスの腹筋とヘソにむしゃぶりついた後(ユリウスはこの時打ち上げられた魚のように腰を跳ねさせていた)――なぜかぐしょぐしょになっているズボンを剥ぎ取ると――ここでも飛び出た肉棒にむしゃぶりつき(ユリウスはこの時まるで純潔を奪われた乙女のように一筋の涙を流していた)

 ――ユリウスのチンコを挿れた。

「あっは……クッ、アァ――タエっ……タエコ!」

 タエコに騎乗され、好きに肉棒を弄ばれている神官ユリウスの喘ぎはそれはそれは妙子を興奮させた。

 ベッドに広がった美しい銀髪が波打つように跳ね、美貌の神官は快楽に耐えるように顔を歪めていた。

(普段から、カッコ悪い所とか、隙とか、見せた事無いんだろうな)

 快楽に身を委ねながらもギリギリの所で尊厳を守るかの様に歯を食い縛る彼の耐えるような様に妙子は支配欲を煽られて行く。

(こんな彼は――私だけのもの)

 そう思った時、キュッと膣が締まった感覚と同時に中へ温かさが広がって妙子は彼が果てた事を知った。

(これから……たくさん、色々したい……させてくれるかな?……いや、しよう)

 そう勝手に決めた妙子は、彼の詰め襟の神官服に手を掛けた。

 首に建てられた詰め襟と、掌の半分は隠れる袖、布そのものもしっかりとしていて彼の肌を見る事は殆ど叶わない禁欲的な物だった。

 それでも身体のラインに沿うように作られたシルエットは逆にエロイ。とも言える。

 妙子は下の口にユリウスを食んだまま、作業を開始した。

 当のユリウスは果てた後の倦怠感にぐったりとしているので大人しい物だった。

 詰め襟のフックに指を掛け、まず首元を解放してやる。ファスナーなんてものがないのか、面の飾りボタンを開いても、内側にまでいくつもボタンがあったので妙子は焦れて引き千切ってしまおうかと言う欲求を抑え込むのに苦労した。

 少しずつ露わにしていく感じが『暴く』と言う気持ちにさせてくれるので、これも一興と自分に言い聞かせる。

 鎖骨が露わになった時点で妙子は与えられた褒美に食らいつく犬のようにユリウスの白い首筋と鎖骨を舐め回し、吸い付いた。

「ウッ、うぅ……は、あっ!」

「……気持ちいいねぇ、ユリウス……可愛い……」

 すると、再び力を持ち始めるユリウスの中心。

 思わずクスリと笑うとユリウスが涙に濡れた目で不安そうに妙子を窺うので、堪らず深く口付けた。

「んんんっ!」

(可愛い、綺麗、愛しい――)

 そう思うたび妙子の膣はキュンキュンとユリウスの肉を食むので、ユリウスには甘い拷問のような状況であった。

 ユリウスは今すぐにでも欲望のまま彼女を押し倒して己の欲望を最奥に叩き込みたい。

 けれども上機嫌でユリウスを暴いていく彼女が愛しく可愛らしく、その行動を邪魔すれば嫌われてしまうかもしれないという臆病な恐れのようなものも抱いていた。

 ユリウスは、愛しく想う相手というのが『女神』という一言では片付けられないのだとこの時知った。

(この苦しみさえも快楽の内と思わせるなんて……)

 何度放てばこの欲望は収まるのか。

 途方に暮れながらも彼女との交わりを欲してしまう。

 美しくも愛らしい、彼女の与えてくれる物なら自分はきっと何でも受け入れてしまうだろう――それがとても恐ろしく、そして震える程の悦びでもある。

 濡れたように艶やかな黒髪も、ぷっくりとした小さな唇も、ユリウスに極上の快楽を与えてくれる舌先も、貪欲な花園も。

 ユリウスにとっては何もかもが完璧だった。

 神に与えられたつがい、贈り物。

 自分はこれほどの物を与えられるような行いをしてきただろうか?

 それともこれは前払いだとでも言うのか。

 ならば神は少し自分を買い被り過ぎだとユリウスは思う。

 今まで神に向けていたユリウスの献身はもう、目の前の女神にしか向けられないだろう。

 私は彼女の奴隷でいい――

 彼女に全てを捧げたい。

 神官である自分に魅力を感じていると言う彼女の目を一生欺きながら、神に仕える者だけが着るこの服を着続けよう。

 彼女に暴いて貰うために――

 美貌の神官長、神に仕える王族の系譜と名高いユリウスの元に落ち人――『神の贈り物』が現れた事実は、驚きと喜びを持って受け入れられた。

 落ち人は神官長と共に神殿住まいが許され、ごく稀ではあるが神官長と共に神事へ参加することもあった。

 二人揃った祭り事ともなれば、仲睦まじい二人を一目見ようと国中から人々が押し寄せ、二人を祝福し、祝福を受けた。

 ――しかし、皆は知らない。

 二人が夜な夜な神聖なる祈りの間で睦み合っていることを。

 神官長は、神の前で丸裸にされながら床に磔にされ、毎日後ろの穴を落ち人によって掻き回され、弄られ、勃たせてしまっては、指を突っ込まれたまま落ち人の口の中で神界へ昇るような快楽を与えられ、彼女に言われるがまま

 ――何度も神に慈悲を請いながら吐精した。

 上手くできれば、ユリウスの顔を跨いで腰を下ろし濡れそぼった花園を舐めさせてくれる。

 ユリウスが伸ばす舌に、妙子自らクリトリスを剥いてクルクルと押し当てて来た。

 ユリウスがチロチロと動かす舌に、極上の快楽に、妙子はどんどん我を失って行き、しまいにはマンコ全体をユリウスの美しい顔になすりつける様に腰を振り出す。

 ユリウスの美しい鼻先でクリトリスをグリグリと捏ねる。

 その美しい鼻を、雌穴に軽く入れたりもしてみた。

 むせ返るような妙子の匂いにユリウスが我を忘れてもっと欲しいと強請ると、妙子はその美しい顔の男の願いを聞き入れる。

 ユリウスの鼻を使ってオナニーした。

 鼻先を雌穴に入れグリグリ押し付けながら、クリトリスを自分でシゴいていると、尻の穴を柔らかなものに舐めまわされて呆気なくイッた。

 そして解放される聖水。

 ユリウスは恍惚としながらソレを口で受け止め、受け止めきれなかった聖水は彼の美しい顔を、髪を、濡らしていった。

 妙子が聖水を出し切る頃には直接其処に形の良い唇でちゅうちゅうと吸い付く。

 それを眺めながら、妙子はコポリと蜜を再び垂れ流し、ユリウスはその分身をギンギンにしていた――

 懺悔の間、板一つ挟んだ向こうの信者が、「夫が居ながら、『神官長』に恋をしてしまった」と懺悔する向かいで、落ち人と繋がっていた事もある。

 しかし、神官長ユリウスを指名しつつのこう言った懺悔は毎日のようにくるので、妙子はその度に板一つ挟んだ所で、ユリウスに脚を舐めさせたり、逆に咥えて搾り取ったり、壁に手を付かせて、後ろの穴をひたすら掻き回した事もあった。

 人の物に手を出そうと言う浅ましい女達へのささやかな意趣返しであった。

 それから、仕事とは言えソレを聞きに行くユリウスへの罰でもある。

 そう言うとユリウスは決まってペニスを勃たせたり、ケツ穴をキュッと締めて喜ぶので、妙子はその可愛さに当初の目的など忘れてしまうのだった。

 神に慈悲を請いながら何度も達する神官長。

 彼が祭事に赴いた時は、そんな彼の痴態を思い出しながら、澄まし顔で講説をする彼をオカズに自慰をする趣味を妙子はやめられそうにない。

 今も、気難しそうな年寄りを前に柔らかな笑みを湛えて話を聞いている。

 美しく清廉な神官ユリウス――

 妙子は、もし仮に彼が神官を辞する日が来たらどうするとかそんな事、考えもしていない。とっくに彼女自身、ユリウス自身の身体に溺れている事など気付いても居ないのだ。

 だから今は、ただ、自慰に耽る。

 皆んな・・・が求める、完璧な神官を演じる彼・・・・・・・・・・を見ながら――

ブックマーク、評価、有難うございます。

神官長編他、騎士団長様や狼獣人さん、エルフさんなどシリーズで考えておりますので、ご興味がございましたら引き続きブクマしながら見守っていただけると嬉しいです。

【※騎士団長編を短編ではありますがアップさせていただきました。宜しければ合わせてご一読下さい。】

評価、小躍りするほど嬉しかったです。

ありがとうございました。

読了有難うございました。