――きもちいきもちいきもちいきもちい
絶え間なく与えられる絶頂の中、優香の頭の中はそれだけに支配されていた。
ぶちゅっぐっちゅぬっちゅぬっ……
「あひぃぃいい―――― 」
「優香の中……気持ちいい、ぎゅうぎゅう俺のを締め付けてくるよ? こんなに醜い魔人のペニスでも、優香は気持ちよくなっちゃうんだね? 」
インキュバスの種付けで気持ちよくなるのは当たり前、そんな事を言っていた口で、ラウロは願望を口にした。
「ねぇ優香、こんなの覚えたらもう他のおちんちんのお嫁さんになれないよね? インキュバスおちんぽきもちいい? 」
(お嫁さん……だれ、だれの……? あ……そこも最高にきもちいぃ……おちんぽ…… )
焦点の合わない視線が所在なさげに泳いで、自分を組み敷き腰を振る影に優香は目を止めた。
(わたし、らうろ……ラウロに…… )
――ぷちゅるっ
「ひうっ?! 」
子宮に刺すような快楽。
先ほどから断続的に与えられるソレは、快感だけではない。
確かな多幸感をも優香に与えた。
「ああ優香、とても気持ちよさそうだね 」
(そう、きもちぃの……さっきから、ずっとずっときもちぃの )
「俺――ラウロ・アッカルドの子を生んでくれる? あっ……また……ッ 」
――ぷちゅるるっ
「ァア―― 」
(そう、私……らうろ……ラウロに抱かれてて…… )
定まらない思考の波の中、溺れていた優香に『ラウロ 』というロープが垂らされて、優香はうわごとのように「きもちぃきもちぃ」と言いながらソレにすがり付く。
途端――霧がかっていたような視界が晴れて、目の前に姿を現したソレ。
「ら……うろ? 」
「ッ ――――!! 」
優香の中にミチミチに突き刺さっていた怒張が爆発した。
――ビュルルル
「キャアァ?! 」
――ぴゅるっ
――ビュルルル、ビャクッ、ビュルルルルル
異形の魔人、その精液が大量に優香の蜜壺へ二度三度と放たれ続ける。
子宮口に埋まっていたソレが、役目を終えたとばかりチャルリと抜けて行った時、優香はあまりの気持ち悦さに蚊の鳴くような声が出た。
インキュバスの魔力を帯びた子種、その部屋の前には次は我もと流し込まれたものは優香の腹をパンパンに満たしていった。
やがて優香に全てを出しきった異形が気付いた。彼女がずっと自分を見ていた事に。
「ッ …… 」
一瞬、苦しげな表情を見せて視線を逸らした後、異形は自嘲気味に笑ってみせる。
「コレで……魔力定着が済むまでの一月程の繁殖行為は『人族の姿 』でも問題無い筈だ。もう、こんな抱きかたは二度としないと約束する。だから―― 」
「……? 」
優香は未だ天国に居るかのような余韻の中で、自分の恋人が何故苦しげにしているのか理解できなかった。
「ラウロ……? どこか痛いの? 」
「え……? 」
「赤い肌、痛いの? 」
ラウロは一瞬何を言われているのか理解出来なかったが、酷く醜い最終形態の自分の姿を思い出して今自分の肌は赤く、優香はソレは痛いのかと聞いている事に気付いた。
「いや……痛くは…… 」
「……じゃあ、ツノ? 生える時、痛い?
いまだ醜い異形に中心を貫かれたまま、力なく横たわる『ツガイ 』が、己を気にかけている。
ラウロはただでさえ長い前髪をくしゃりとすいて、目元を大きな手で覆った。
「ツノは……そうだな、生える時は少し引きつる痛みがあるけれど……一瞬だよ、今は……痛くない 」
そう言うラウロを見ていた優香は、心配そうに眉間を寄せた。
「じゃあ牙? それとも身体が大きくなった時? あ、尻尾……? 」
「牙も身体もだい、じょお……ぶ。 尻尾は――ふふっ気持ち悦いだけだったかな? 」
「っ!! 」
あ、今きっと顔を真っ赤にしている。そう感じたラウロは指の隙間から『ツガイ 』を盗み見た。
――ああ……可愛い……どうしてこんなに可愛いんだろうか
そんなふうにラウロが思った時、ビクリとみじろぎした優香が「ね、らうろっ 」と叫ぶように彼を呼んだ。
「なに、優香? 」
「んっと…… 」
何を言うか、決めてなかったような様子で「えっとえっと 」と暫く悩んだ様子の彼女が、とても小さな声で言った。
「キス……して、下さい 」
「え…… 」
ラウロは一瞬何を言われたのかわからなかった。
頭が理解し損ねたと言っていい。
それくらい、言われる事なんてカケラも思い浮かばなかった言葉。
「あの、ラウロと……赤ちゃん、作ったんだよね? ずっと、生きるって…… 」
「え、あ……ああ……俺がしたから、優香のタイミングの良い時に……できると思う 」
そういうと、優香は恥じらうように両手の指先で口元を覆って身悶えた。
「私、ラウロの……お嫁さんって……その言葉が本当なら、この行為が……ラウロと繋がってる間にわたし―― 」
――キスしたいです。
「――――ッ ?! 」
ラウロはただでさえ強面となって怖い顔をしているというのに、金色の目を見開いてますます人らしさからは離れた表情になった。
縦割れの瞳孔が忙しなく揺れている。
「いつも、ラウロがしてくれる……顔にいっぱいしてくれるキス……あれが私、えっと……その――好きなんです。愛されてるって気がして 」
ラウロは堪らない気持ちになって、再び目元を覆う。
でも、言わないと――コレだけは、ちゃんと。
「『気がする 』じゃないよ、優香 」
「え……? 」
目元を覆っていた大きな手が離れて、優香の前髪を梳く。
長い爪で傷つけないように、爪の背で愛しい『ツガイ 』の頰をなぞった。
「愛してるんだ、もうとっくに。君は覚えていないと思うけど――君が俺の目の前に現れて、最初のキスをした時から 」
優香の瞳に映る異形が、ゆっくりと屈んで再び彼女へ覆い被さった。
「どうしようもないくらい、決して手放せないと……こんな風に抱いてしまう程に、君が好きで仕方がない 」
ポタリと、優香の額に水滴が落とされた。
次いで、柔らかい――優香の好きなあのキスが。
「愛している……ッ優香 」
泣き笑いみたいな声が、優香の耳朶を打った。